第16号   平成15年2月発行



巻頭
「仏の道を生きる」
                       住職  標  隆光


 新しい年を迎え本年もよろしくお願い致します。
 一月に発送予定でしたが多忙の中、完成が遅れ新年の挨拶も遅くなってしまい申し訳ございません。
 昨年は本堂落慶法要を五月に無事終え、多くの皆様方のご協力を戴きありがとうございました。
 また、十二月二十三日には「冬至祭」が例年どおり盛大に行なわれ、ご寄付いただいた新調の仏具を使用して、護摩法要が勤修されました。詳しくは五ページでご紹介します。
 さて、その冬至祭において皆様方に「仏のみおしえ」と言う月めくりの仏教法語カレンダーをお配りいたしました。この巻頭の題は一月の「日々仏の道を生きよう」から引用しましたが、仏の道とは仏法(仏教の教え)に従った生き方を実践しようと言うことです。当然出家して仏門に入れば様々な規則(戒律)の元に生活態度が定められ、それによって心が浄化されていきます。日本人の多くは仏教徒であっても、出
家していないので、戒律を授かっていません。したがって仏教の教理自体も理解していないのが現実です。確かに仏教全体を把握することは簡単になされることではないのですが、日々の生活の中で仏教の教えを実感できることは少しの知識の中でも可能です。今回の法語カレンダーでは「十善戒」を元に二月から十一月までを当てました。やってはいけないことを十個の戒にしたものです。
 二月から四月までは行動(身体)として行なってはいけないことが五月から八月までは言葉(口)言動に関する行なってはいけないこと、九月から十一月は心(意識)に関する行なってはいけないことが示されています。(詳しくは三ページをご覧下さい)
 仏教の教えの基本は「諸悪莫作」「就善奉行」「是処仏教」であり、つまり悪いことはしない・良いことは進んで実践すると言うことです。しかし、判っていてもなかなか出来ないのが凡夫としての有り様です。新しい年に気持ちを入れ替え仏教の教えを理解しながらの生活を実践してみてください。きっと幸せで充実感のある日々となることでしょう。


心の教育

 「行 儀」

 先日、愚息の小学生の友達が遊びに来ていた折りに「お行儀が悪いよ」と注意をしたら行儀の意味が理解できないようで『きょとん』としていました。
近年、子供を育てる上で「躾(しつけ)」ということが疎かにされ、学問(勉強)のみが教育であるかのような風潮になってきました。相手を気遣うことが出来ず、自己中心的な考えが元で粗暴な人間が多くなり、痛ましい事件が次々と起こる世の中となったのもその一因です。
「躾」とは『行儀と作法』を日常の家庭で教えることを言います。『行儀』とは「こうしてはいけない」とか「こうするが良い」という善悪を説き、『作法』では身の振る舞いや見苦しさを否めています。こうしたことから、家庭での日常教育は、人間の根底を作る上で非常に重要な教育なのです。
現在ではこの事を疎かにしてしまい、子供に甘い家庭が増えているのが現状です。特に中学生の年代では親の方も諦めが入ってきて、強く指導できないことも子供を甘やかしています。お行儀の良い子供を育てることが親の勤めであることを忘れてはいせません。

仏教の教え

  「 真言宗・天台宗」

両宗とも密教と呼ばれています。真言宗の開祖は弘法大師空海で、天台宗の開祖は伝教大師最澄です。共に西暦八〇四年に遣唐使として中国に渡り密教の教えを学び帰国しました。時代も奈良から平安時代となり京の都に新たな仏教の教えや文化が必要とされていました。最澄は比叡山に天台宗を興して台密と呼ばれたのに対し、空海は京の都に東寺を与えられ真言宗の根本道場とし東密と呼ばれました。
その教義は、大日如来を中心とする仏の世界(曼荼羅)の仏の法力によって祈願成就し現世利益をもたらす事でした。また日本古来からあった神道とも結びついて神仏混合の寺院が創建され呪術による祈祷を中心に国家の安泰や疫病平癒を祈りました。教義は奥が深く、子師相伝の秘密を守らなければならない実践修行(修験道)や経典に示された作法や経典読解など一般の人には簡単に理解できるものではありませんでした。
また、文化や仏教美術にも多くの影響を与え、藤原時代と共に貴族の間で大きく発展しました。その後、平安後期から鎌倉時代に新たに誕生した仏教宗派の基盤となり、その教えも民衆に判りやすく簡略化されていきました。(次回は念仏と浄土宗を解説します)


法語カレンダー解説

 明王寺で毎年「冬至祭」にお配りしています仏教法語カレンダー「仏教のみおしえ」についてご説明します。このカレンダーは月めくりカレンダーで上半分には標語のような仏教の法語が書いてあります。

一月「日々仏の道を歩もう」
 毎日を仏教の教えに則して生活していきましょう。仏教の基本は「悪いことをせず、善いことをしなさい」です。二月から十一月までは十善戒という仏教の犯してはならない十個の戒律をひと月ずつ法語としています。

二月「あらゆる生命を尊重しよう」(不殺生)
 生きているものをむやみに殺してはいけません。戦争やテロはもちろん恨みや短絡的な殺人行為は許されるものではありません。人間のみならず動物や昆虫・植物など生命をもって生きているものに対し安易にその生命を奪ってはなりません。

三月「他人のものを尊重しよう」(不偸盗)
 盗みを働いてはいけません。物には所有権がありそれを犯すことは法律でも許されていません。最近では引ったくりや万引き、空き巣など被害が拡大しています。良心のある人間の集まりが、安心で安全な社会と国を作り上げていきます。

四月「お互いを尊重しあおう」(不邪淫)
 男女の道を乱さないよう戒めあいましょう。数年前には「不倫」と名づけ流行を正当化する風潮もありましたが、元来契りを結んで一緒になったことを忘れてはいけません。また、恋愛対象の中で二股をかけるなどの不純行為も犯してはいけません。

五月「正直に話そう」(不妄語)
 嘘偽りを言ってはいけません。一度嘘をつくと最後まで嘘を付き通さなくてはならなくなります。即ちあなたの人生、その一生は嘘で塗り固められ、後ろめたい心を常にもちつづける最悪な一生になってしまいます。

六月「よく考えて話をしよう」(不綺語)
 きれいごとや誇張表現などで人を惑わしてはいけません。綺語とは「綺麗な言葉」と言う意味もありますが、仏教では飾りをつけて真の意味を曲げてしまい、いつわり飾った言葉とされています。

七月「優しい言葉を使おう」(不悪口)
 他人から憎まれ口を言われないようにしましょう。それには自ら慎み、穏やかな気持ちを持てば、自然と言葉が優しくなり周囲の人たちとも楽しい会話ができ、人間関係が良好になります。
 次回の号で後半を解説します。

仏教からきた言葉

「道化」

 人々に仏の道を説き、救い導く事を言い「道法教化」から来た言葉です。その起源は仏教の教化方法にありました。どんなにありがたい教えでも、むずかしい言葉やまじめで硬い話では、一般聴衆には受け入れてもらえず理解もされずに終わってしまいます。そこで笑いを誘うような話し方や身振り手振りを交え、大道芸のように判り易く楽しく説法をする方法を言います。
 やがて滑稽なことをしたりして、見ているから笑いさそう「ピエロ」を道化師と呼んでいますが、本来は仏教の教えを楽しく説くお坊さんのことだったのです。

「往生」

 死後、極楽に生まれ変わることを「極楽往生」「浄土往生」と言います。現世で死ななければ「往生」は出来ないので死ぬことそのものを指すようになりました。「大往生」と言えば長生きの中、安らかな最期だった事を言います。
 また、「往生際が悪い」と言った時には、追いつめられてどうしようもないことが判っていても抵抗する様を言います。また、「雪で立ち往生」なども成すすべも無く立ちふさがってしまったどうしょうもならない状況を言います。

冬至祭ご報告

十二月二十一日、午後から雪となって、たくさん降らなければと祈っていたら、寺の付近はさして積もらず、雪かきをすることも無く大事にならなくてすみ胸を撫で下ろしたところでした。また、前日までの天気予報では二十三日は朝から快晴と伝えられていたのですが、朝から鉛色の雲が空を覆い、なかなか晴れ上がる様子がありません。結局、日中薄日が射したくらいでさっぱりしない一日となってしまいました。外で「かぼちゃほうとう」の接待をするので天気はすごく気になるところで、雨や雪、大風と障害は多いのですが、日が射さなかった程度は主催者側からすれば合格点の天候でした。
 参拝の皆様方も例年どおりの三百人ほどお見えになられました。一昨年の冬至祭も新築された本堂で行なわれましたが、護摩壇や仏具は新調されていませんでしたが、今回の冬至祭は全てが新調され荘厳の設えの中、護摩法要が勤修されました。
 お手伝い頂いた方々には寒い中を早朝よりご出仕いただき誠にありがとうございました。また、今年一年お元気で今年の冬至祭にお目に掛かりましょう。

追加寄付御報告  

 前回の「明王寺だより」の後にご寄付いただきました方のご芳名をご披露致します。追加でお寄付いただきました方は合計金額も併せて記載させていただきました。貴重なご浄財を戴き誠にありがとうございました。なお今後、追加のご寄付(物品を含む)を頂いた場合は次の「たより」の中で順次、発表させて頂きます。

今回寄付金額  御住所    御芳名     合計寄付金額
  七万円     韮崎市   湯舟 収次 殿    十二万円
  三万円     白根町   中沢 勉一 殿   二十五万円
  三万円     甲西町   川ア 稔幸 殿   八十三万円
  一万円     玉穂町   深澤 静雄 殿      五万円
  一万円     櫛形町   名取   勝 殿      三万円
  一万円     三郷市   中沢 五男 殿      六万円
 
今回寄付金額  御住所   御 芳 名
  一万円     韮崎市   沼田 道夫 殿
  一万円     舂米区   加藤 友規 殿
  二万円     石和町   斉藤 和一 殿

追加物納寄付者(平成十四年八月〜十二月)
 ファンヒーター一台   藤沢市    田丸  博 殿
 石油ストーブ二台    舂米区   大森 義夫 殿

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