第18号   平成17年1月発行


巻頭
 「生きる者としてのルール」

                                           住職  標  隆光

 新しい年を迎え本年もよろしくお願い致します。

 今や世界中も日本国内も不安定の中にあります。日々のテレビニュースや新聞紙面には悲惨な報道が後を絶えません。特に人の命を軽視する『殺人』は一番行なってはいけないことです。
 イラクについては前号でお話させていただきましたが、国内では相変わらず、犯罪の低年齢化と凶悪化が目立ち、人の命が余りにも軽く見られています。また、大人社会においても、窃盗傷害致死事件に始まり、怨恨や薬物使用による幻覚的犯罪、恋愛のもつれ、異常性的犯罪など、殺人犯罪は毎日のように報道されています。
 命の尊さを理解しあうことが本来の平和な社会を創造する根底となるべきですが、残念ながら自分の身を一番に考える身勝手さが犯罪者の心理としてあげられます。

 仏教の教えの根本には生活の中のルールとして「五戒」あるいは「十善戒」という戒律があります。
 その第一の戒に「不殺生戒」があります。この戒については、どんな人でも理解できる戒ですが、実践することが重要なことなのです。いくら科学が進歩しても、安心して互いが信頼できる社会を作る事が急務といえましょう。
 十善戒では次の十のおこなってはいけない戒が解かれています。
「不殺生」 命あるものを殺さない
「不偸盗」 他人の所有物を盗まない
「不邪淫」 よこしまな性的関係を慎む
「不妄語」 他人をおとし入れるような嘘を言わない
「不綺語」 でまかせで、いい加減なことを言わない 
「不悪口」 悪口や荒々しい言葉を使わない 
「不両舌」 二枚舌を使わない 陰口を言わない 
「不慳貪」 欲深く物事に執着しない 
「不瞋恚」 怒り・恨みなどをもたない 憎んで怒らない
「不邪見」 誤った物の見方をしない

 乱れた世の中にあって、自らの戒めと啓発のために是非、実践をして若者の手本となる大人になって頂きたいと思います。

仏教の教え
  
「臨済宗・曹洞宗」

 禅宗と言うと座禅を修行の中心とする宗派を指すことは良く知るところです。このような修行方法の元はインドにありますが、中国に伝来すると老子荘子思想、神仙道や密教などと関係しながら6世紀に達磨大師によって体系付けられます。その後、中国において南宋禅と北宋禅に分かれた後、南宋禅が残り、五つに分家して発展していきました。
 禅の日本伝来というと鎌倉時代に臨済禅を伝えて臨済宗を中国から伝えた「栄西」が知られていますが、それより以前から禅の考えは初期の奈良仏教の「法相宗」の教義にも見られ、また密教の中の観想(瞑想)の行法も禅の根本を持合せています。
 しかして、栄西が中国の臨済禅の正道を伝え、師僧との禅問答など公案工夫して覚りの境地に至るとしました。日本において武家社会に強く働きかけながら支持を受け、茶道・華道などの文化と共に大きく発展しました。
 一方、曹洞宗は栄西が臨済宗を確立した後に中国(宋)において曹洞宗の元を学び受けた「道元」によって開宗しました。臨済禅との大きな違いは、武家政治との根絶を図り、自らを問う只管打座の実践を貫き、民衆との接点を多く取りました。
 山梨県には臨済宗系の寺院がとても多く、武家社会の影響を大きく受けた鎌倉仏教と甲斐源氏以下武田家によって篤く信仰された所以です。また、曹洞宗寺院はその前身を辿ると真言宗や天台宗寺院からの改宗した寺院が多いのも特徴です。
(次回は浄土真宗を解説します)

法句経の教え 1
 お釈迦様の時代の古い経典は「経集」と「法句経」が代表的です。いずれも長文のお経というイメージではなく「詩集」のような形でまとめられています。お釈迦様が直接弟子達に説いた教えやそれ以前の古典で説かれていた教えなど生活に密着した教えがたくさん書かれています。
 特に「法句経」はサンスクリット語で「ダンマパダ」と発音し、ダンマは「法」または「真理」を意味し、パダは「言葉」を意味します。つまり『真理の言葉』と訳せます。経典は二六品(章)四二三偈の詩から成り立っています。詩の内容は覚りを得る為の実体験や人間の愚かさなどを比喩を交えて対句形式で真実の教えを分かりやすく説かれています。特に戦後の復興期に東京・神田寺の初代ご住職(主管)である友松圓諦師が平易に和訳し、ラジオ講話や講演会・出版物によって解説したことにより、広く日本の人々にも共感されました。その法句経の教えの中にも戦争や骨肉の争いを平和な社会に導く真理を説いた句があります。
 五番 『怨み心を持っている間は平和はやってこない。ふたたび怨みを持たない耐え忍ぶ心のみが、互いの怨みを心の中から消し去ることができるのである。これは仏の真理である』(私訳)
 仏教徒はこの真理を理解し、争いを避けなければならないのは当然ですが、他の宗教にも理解の輪が広まる事を願います。
※神田寺は住職が22歳から2年間住込み修行したお寺です。

仏教からきた言葉
「給仕」(きゅうじ)

 「お給仕」と言えば、食事の世話をする人に対して表す言葉ですが、仏教では、仏様にお供えすることや高僧の身の回りの世話をする人の事を指します。心を込めてお仕えすることが給仕の真の意味合いです。

「法被」(はっぴ)

 お祭りに御輿を担ぐ時などに「法被」を着ますが、仏教では高僧が座る椅子(曲録)の背もたれの部分に掛ける金襴などの掛け布を指します。

「意地」(いじ)

 現在では「意地を張る」「意地が悪い」などに使われ感情など心持ちを表現する語句に使われています。
 元々仏教では人間の感覚を「眼・耳・鼻・舌・身・意」の六つに分けています。これを六根と言い、この中の『意』は思考する心、感じる心などを表し、『地』は「地・水・火・風・空」の五大(自然・物の成り立ち)の内、物の基本や発生の源を表しています。

冬至祭ご報告
 暖冬の予想どおり、朝の冷え込みもそれ程でもなく、お陰様で一日晴天に恵まれました。
 お手伝いの皆さんも朝八時半には集合していただき、女性の方々には、ほうとう作りを始めていただき、男性の方々にはテーブルと椅子のセッティング、幕の飾り付け、お仏供の袋詰めを担当していただきました。
 日中は最高気温が12度にも上がり、無風の穏やかな天候に御参拝いただいた方も八百人を越す人数で、ほうとうのご接待も途切れることなく大盛況でありました。祭典当日の模様をご紹介します。



山内(境内)整備ご報告

 引き続き追加ご寄付を頂いております資金を元に境内地内の整備を順次行なっております。ここにご報告申し上げます。



追加寄付ご報告  (平成十六年一月〜十七年一月)

 前回の「明王寺だより」の後にご寄付いただきました方のご芳名をご披露致します。貴重なご浄財を戴き誠にありがとうございました。お寄せ戴きました寄付金は境内整備資金に充当させて頂きます。また今後、追加のご寄付(物品を含む)を頂いた場合は次の「たより」の中で順次、発表させて頂きます。

追加寄付金額  御住所         御芳名      合計寄付金額
 五万円    藤沢市長後       田丸  博 殿     壱百五万円
 三万円    南アルプス市飯野   中沢 勉一 殿     三十一万円
 二万円    南アルプス市古市場  川ア 正三 殿     三十二万円
 一万円    南アルプス市在家塚  斉藤  信 殿        七万円
 一万円    増穂町舂米       中澤  修 殿       二万円

新規寄付金額   御住所     御芳名
 六十万円    甲斐市篠原   大下 公治 殿

追加物納寄付者(平成十七年一月迄)
 ●付属墓地境界塀及び境内東面塀漆喰工事一式
 ●プレハブ一棟(5.5坪)及び外壁・内面漆喰工事
                     明王寺護寺有志 殿
 ●エアコン取付工事(上記プレハブ写真)
                 増穂町長沢 内池電気 殿
 ●石油ブルーヒーター一台(上記写真)
         ・ポット四個・大鍋他
            南アルプス市沢登 鶴田喜美江 殿


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